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昨今の日本の社会保障の事情は、少子高齢化により財政を非常に圧迫し続けています。

平成28年8月には、生活保護受給世帯数が163万6636人と、統計が始まって以来過去最高の数字を更新しました。

平成28年11月の厚生労働省の発表によれば、高齢者の生活保護受給率は、1995年に1.5%だったのが、2015年には2.89%と、倍増したとのことです。

生活保護受給世帯に占める、高齢者世帯数は83万4621世帯で、受給世帯全体の5割以上を高齢者世帯が占めているのが現状です。

年金制度改革により、年金の最低納付月数が10年に引き下げられたしても、高齢者の生活保護世帯は今後も右肩上がりで増え続けることが予測されます。

さて、前段が長くなりましたが、生活保護の現状は、財政的に大変厳しい状況です。

平成25年から27年度まで3年間にかけて行われた生活保護基準額の引き下げもまだ記憶に新しい話に思えますが、

実は、平成30年度あたりに生活保護の大々的な基準額の引き下げが行われる動きが見えてきました。本日は、その内容とポイントについて解説したいと思います。

財務省の生活保護基準額引き下げ提案の要旨

財務省は平成28年10月に行われた、財政制度等審議会で平成30年度に行う生活保護基準額の見直しの検討に向けて、生活保護基準額の引き下げを検討するように厚生労働省に提案しました。

財政制度等審議会とは、財務省の諮問機関で、国の財政について細かく提案等を行う会議です。

実際に生活保護の基準額引き下げを検討し、それを実施するのは厚生労働省の権利なのですが、国のお財布を握っているのが財務省です。

つまり、平成28年10月に、財務省が厚生労働省に対して、このままの制度運営では生活保護制度が成り立たないため、

「平成30年度の生活保護基準見直しを考える際には、基準を引き下げる方向で考えなさいよ」

という提言をしたという意味です。

ということは、平成29年度に厚生労働省は、生活保護の基準額を引き下げる方向で検討を行い、筆者の予想では検討の結果、平成30年度に大規模な生活保護の基準額の見直しがあるものと予想されます。

基準額引き下げのポイント

1 母子世帯の生活保護基準額見直し

2人の子どもをもつ母子世帯の生活保護基準額は2級地ー1の宇都宮市で18万4000円です。

しかし、世帯の年収が500万円程度の世帯における30歳代の一般世帯の支出額は1か月に平均18万円です。財政制度等審議会では、2つの世帯の支出額が同程度だとして問題視する意見を述べました。

つまり、生活保護の母子世帯は1か月に18万4千円使えるけど、年収500万円の世帯でも1か月に使える額の平均は同じくらいですよという話です。

一見納得しそうな説明の仕方ですが、ここには貯蓄の概念が抜け落ちています。年収500万円の世帯では貯蓄も見越して、消費支出を下げてますし、貯蓄をしたお金で将来的には何かを支出することになります。両者を比べるのはお門違いのように思えます。

また、小中学生の子どもをもつ一人親の母子世帯を引き合いにだし、母子加算や教育扶助、児童養育加算などを加味すると、年収300万円未満の一般所得の世帯よりも、より高い消費支出であるという実態を指摘しています。

それにより、一般の母子世帯に比べ、生活保護を受給する母子世帯は就労意欲がそがれており、現に全母子世帯の就労率が85%であるのに、生活保護世帯では47%であることを指摘しました。

この辺りの就労率の話も、なんとなく納得させられそうな話に聞こえますが、生活保護を受給する母子世帯の中には、障害や精神疾病など、多くの困難を抱えられている世帯があることを考えると一概にどうこう言える話ではないように筆者は感じます。

上記の理由により、母子世帯の基準額引き下げを検討するようにと財務省は提案しています。

あくまで予想ですが、平成31年度に母子加算の引き下げが決行される動きがあるものと感じます。

これは、昨今とりざたされている「子どもの貧困」という課題に逆行するものであると考えます。

2 居住地によって保護費が変わる級地制度の見直し

生活保護は居住地によって保護費の金額が変わる「級地制度」という制度を取り入れています。

具体的には1級地ー1が東京や大阪などの都心部で、2級地ー1、2級地ー2、3級地ー1、3級地ー2と、6つの区分によって、生活保護の金額を変えますよという制度です。

これにより、地域間の物価の違いによる最低生活費を計算し、毎月の保護費を決める根拠とされています。

しかし、この級地制度は昭和62年に見直しが行われてから、現在に至るまで、およそ30年間同じ級地割が使われてきました。

その間、平成の大合併などにより、市町村は合併したのですが、その際に着けられる級地は、合併される市町村の中で、最も高い級地が付いている地域の級地を採用するというものです。

これは、極端な例で言えば、1級地-1の東京都千代田区と、3級地ー1の小笠原村がもしも合併したとすると、小笠原村に元々住んでいた人の級地は1級地ー1に跳ね上がり、物価が低いにもかかわらず最も高い生活保護費を得られるようになるのです。

これが実際に起こったのが、平成17年に京北町(3級地ー1)が合併し、京都市(1級地ー1)になった時のことです。また佐世保市でも同様のことが平成22年に起こり、3級地ー2の級地であった江迎町と、鹿町町が合併により2級地ー2の佐世保市となっています。

このことから、次回平成30年度に起こるであろう基準の引き下げの際は、この様に、合併によって起こった級地の不公平を無くすことが課題となっているようです。

この話は中々納得のいくものです。

というか、そもそも合併の際にこの様な議論になる余地がなぜ無かったのかと言うところに疑問がわきます。

3 医療費について自己負担を求める動き

財務省は、生活保護の医療扶助制度について、患者側に自己負担が無いため、患者側にも、病院側にもモラルハザードが生まれやすい構造にあることを指摘しました。

生活保護受給者の多くの方は適正に医療を受けていることが現状なのですが、中には医療費が無料であることを悪用して、ひと月に20日以上も必要ではない通院を行う人もいます。

そのようないわゆる頻回受診というものを防ぐため、指導を行ってもなお、そのような受診を行う保護受給者に対して、医療費の一部自己負担を求めることを指摘しました。

また、生活保護受給者のジェネリック医薬品の使用についても触れました。

生活保護受給者のジェネリック医薬品の利用率が最も高い沖縄県では、77%の人がジェネリック医薬品を使用しているにもかかわらず、最も低い和歌山県では54%の人しかジェネリック医薬品を使用していない事実に触れ、ジェネリック医薬品の使用促進を強化するように提言しています。

ジェネリックについてはその地域による背景等もあるので一概に言えないのですが、行政や薬剤師会の周知徹底のあり方が数値という形で現れたものではないかと考えます。

基準額引き下げのまとめ

平成30年度の基準額の見直しの際は

1 母子加算が引き下げられる恐れが高い

2 級地制度を新しくするので、地域によっては保護費が変更される場合がある

3 頻回受診にたいして、医療費の自己負担が求められることになるかも

という3つの大きな改正があることが予想されます。

それでは本日は以上となります。

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筆者:ねこ忍者
東京在住
生活保護法の研究をしています。
昨年に社会保障関係のNPOを設立し、日々奮闘しております。
生活保護制度について考え、皆さんの役に立てる記事の更新に努めます。

 

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